歴史の町・浜松から舘山寺の旅、浜名湖巨人伝説(後編)

 

前編からの続きです。

 

翌日、舘山寺温泉の名称のもとである舘山寺(かんざんじ)にお参りしました。

曹洞宗秋葉山舘山寺は浜名湖畔に突き出た舘山(たてやま)と呼ばれる小山に鎮座します。

 

創建は平安時代の810年、弘法大師が仏道行脚でこの地を訪れて開創したとされます。

「旅する人々の心を清める寺として、山紫水明のこの地を選んだ」というのは、納得できます。

 

その後、源頼朝、徳川家康などの有力者の尊崇もあり繁栄しますが、明治時代の廃仏毀釈により廃寺となります。

 

その20年後、火伏の神・秋葉山の出張所をもってくることで再興が認められ、

鎮守として秋葉三尺坊大権現も祭るようになりました。

 

御本尊は「福一万願虚空蔵菩薩(ふくいちまんがんこくうぞうぼさつ)」さまで、

無限の知識と慈悲をもち、知恵と福徳を授けてくれる仏尊とされます。

丑年と寅年の守り本尊でもあります。

 

山田の話です。

「福一万願虚空蔵菩薩さまと同じ系統に、

三重県伊勢市朝熊町の朝熊岳金剛證寺のご本尊である〈福威智満虚空蔵大菩薩さま〉がおられます。

朝熊岳金剛證寺は伊勢神宮の奥の院とされます。

“福一万願”がつくことから、虚空蔵大菩薩さまはさまざまな福徳をお持ちの大仏尊であることがわかります」

 

本堂の左手に、天狗の扁額がかかる秋葉三尺坊大権現を祀ります。

天狗は秋葉三尺坊大権現の化身とされます。

 

秋葉三尺坊とは、人間から修行によって迦楼羅(かるら)天に神変した、実在した人物とされます。

 

778年、信州戸隠で生まれた三尺坊は4歳の時に越後蔵王権現に修行に出かけたほどの神童でした。

26歳のとき、蔵王権現堂の十二坊のうちの一つを三尺坊と名付け、そこに住んで精進を重ねました。

 

そして27歳のとき、荒行満願の夜に、法力により迦楼羅天に神変したということです。

(それで、カラス天狗のようなくちばしをしています)

 

神変した三尺坊の元に白狐が現れ、それに乗って809年に秋葉山に舞い降りました。

三尺坊は白狐に乗って神風のようなスピードで移動したとされます。

 (白狐は神さまの使いですね)

 

以降、秋葉山で入寂する1294年まで(516歳!?)、諸国を遊行して人々を救ったと伝えられています。

大火から人々を救った伝承が多かったことから、「火伏せの神」と信仰されるようになりました。

 

生身の人間が修行によって超人的な力を得て神変し、人々を救済したというのは驚きです。

昔の人の修行は超過酷で命がけであり、大自然の霊力も強かったので、現代では考えられないような奇跡も起きたのでしょう。

 

山田の話です。

「神霊学では、天狗界は力を競う世界なので、人間は天狗に転生しない方がよいという見解です。

ミロク北辰の大神さまも、

《人間は本来、子神なので、天狗界を目指すのではなく、黒住宗忠大御神のように、神を目指すことです》

とおっしゃっておられます」

 

火伏の神として有名な秋葉山(あきはさん・浜松市天竜区の秋葉山本宮秋葉神社)は、

江戸時代にはお伊勢参りと人気を2分するほどに人々の信仰を集めました。

 

東京の秋葉原など各地にある「秋葉」という名称の由来は、

この秋葉信仰の影響によるものが多いということです。

 

舘山寺本堂から登っていくと、いろいろなスポットのある散策コースになっています。

頂上のあたりに、高さ16メートルの「舘山寺大観音」が立っています。

 

聖観音菩薩像で、左手に蓮の花を持って、やさしい表情は「美人観音」と称されます。

観音さまを拝むと、慈悲の心で人に接しようという気持ちになります。

 

ほかにも、弘法大師が修行したとされる洞窟(穴大師)もあります。

 

舘山寺本堂の左隣には愛宕神社が鎮座しています。

愛宕神社のご祭神はヒノカグツチノ神で、こちらも火伏の神さまです。

727年聖武天皇の御代の創建ですから、舘山寺より古く、地主神だと思われます。

 

舘山寺を降りてから、舘山寺ロープウェーで浜名湖の湖上を空中散歩しながら、大草山山頂をめざしました。

遠く遠州灘まで360度を見渡す絶景を堪能できます。

 

山頂にはオルゴール博物館があり、貴重なアンティークのオルゴールや演奏を楽しみました。

 

さて、浜名湖といえば“うなぎ”が名産です。

真言宗別格本山・鴨江寺(かもえじ・浜松市中央区)に参拝した後、

途中の道沿いにうなぎ屋さんを見つけました。

 

そこでいただいたランチが美味しかったこと…!

ふっくらジューシーで、今まで食べたうなぎで一番美味しかったです!

 

そのお店は「だいだら」という店名で、パンフレットに浜名湖のダイダラボッチ(巨人)伝説のことを書いていました。

 

山田の記憶では、次のような内容でした。

「ダイダラボッチがぬるっとしたものを踏んで、

すべって手をついたところがくぼみになった。

ダイダラボッチは涙をこぼしながら大笑いした。

そして、流した涙が流れ込んで浜名湖ができた。

ぬるっとしたものはうなぎだった。

浜名湖のうなぎは神さまの涙が含まれているので、とてもおいしい」

 

(※浜名湖のダイダラボッチ伝承は、いくつかバリエーションがあります)

 

それで、浜名湖にもダイダラボッチ(大太郎法師)伝説があることを知りました。

 

だいたい、全国各地の大きな山や湖、島などはダイダラボッチが創ったという伝承が多いのです。

たとえばダイダラボッチが近江(滋賀県)の土を掘って富士山を創り、掘った跡が琵琶湖になったなどです。

 

ダイダラボッチは日本の国土創生の時代に活躍された古きクニタマの神々ではないでしょうか。

 

山田の話です。

「出雲の国引き神話でも、出雲国が小さいので、八束水臣津野命(やつかみずおみつののみこと)が

『国来(くにこ)、国来』と言いながら、いろいろな地域から土地を綱で引っ張ってきて島根半島を継ぎ足したとされます。

 

つまり、八束水臣津野大神は一種の“巨神”であり、別名は東アジア大国魂大神さまです。

ギリシャ神話や北欧神話にも巨神族(巨人族)が登場します」

(※CD『出雲・紀伊・熊野」の秘められた神仏~国引き・国譲りの秘儀と東アジア大国魂大神』をお聴きください)

 

尊星王上帝さまのメッセージです。

《太古、24柱の大国魂大神たちは配下の巨神族を使い、現在の地形を形作った。

ダイダラボッチ伝説はそれらの巨神族がモデルになっている。

巨神族伝説は人類も共有している集合的無意識の中に、その記憶が残されているのだ》

 

 

余談ですが、後日、ウナギは虚空蔵菩薩さまのお使いであるという伝承を知りました。

舘山寺のご本尊が虚空蔵菩薩さまであることも、関係するのかもしれません。

 

全国で、特に河川近くで水害の多い地域において、

ウナギを虚空蔵菩薩さまの化身として、食べるのをタブーとする伝承がいくつかあるそうです。

(埼玉県三郷市、東京都日野市など)

  

「虚空蔵菩薩とウナギ」という取り合わせがなんとも、ユニークというか、不思議ですね(^^)

 

舘山寺本堂(浜松市西区舘山寺町)
舘山寺本堂(浜松市西区舘山寺町)